目次ページ　　江戸時代の人口増加

江戸時代の天草行政区域

天草初代代官、鈴木重成は、着任早々天草郡中の行政基盤を整備した。
すなわち、天草全群の村々を、１０組に分けて、それぞれの組に大庄屋を置き、村に庄屋を置いた。
また首府富岡は、町制を布き、町年寄３名、町庄屋１名を置いた。
これにより、一町十組八十六カ村が誕生した。（後に下田村が誕生して八十七カ村）
この区割りは、見事現在の地区と一致して（旧市町と組の若干の違いがあるが）いることが、下記の表から読み取れる。
その若干の違いは、当時の交通網等から組まれたものと推定される。

表の人口は、天保２年、すなわち天草の乱から１９３年後の人数である。
乱後の人口は、約３万６千人と言われているので、１９３年後とはいえ、ものすごい人口増加をみせている。
というのも、日本全体の人口は、江戸初期と幕末ではほとんど変化がないからだ。
天草の人口増加についてはこちらを。

この表を見ると、だいたい村高と人口は比例しているが、中には、極端な例もある。
例えば、御領組新休村は、村高８石なのに人口は３１１人。
これは、当地がほとんど寺領（東向寺・５０石等）に組み込まれていためだ。
また、砥岐組御所浦村を見ると、村高７３石に対し、人口は3,776人と、多い。
これは、もともと田んぼがない所なので、当たり前だが、人口の多くは漁業に携わっていたからだ。
ちなみに、御所浦村は、４９石を浦高とされている。また、舸子役３１人を出している。

現在の天草は、道路交通網が整備発達し、どんな内陸部にも、車で簡単に行くことができるが、当時は人の足が唯一の通行手段。
そんな状況でも、現在の集落が営まれている内陸部も、既に多くの人が住んでいたことが分かる。
例えば、大江組福連木村。人口８５５人。
しかも、この村は、将軍（幕府）献上の槍木を生産する、という名誉ある村であり、更に庄屋尾上家は、尾上家文書を残すなど、数多い庄屋家でも、後世に実と名を残す名家である。
しかし、将軍に槍木を献上する名誉ある村とはいえ、現在とは比べものにならないくらいの官尊民卑時代、村民は大変な苦労をしたようだ。
このように、村々には、その村特有の歴史があり、その歴史を掘り起こすのも、現在でいう、村おこし・町おこしにつながるかもしれない。

表・江戸時代の行政組織